オーラルピース事業に大変なお力をいただいている九州大学の園元先生が、日本乳酸菌学会2014年度大会にて「乳酸菌の新産業創成をめざした戦略的研究」のタイトルで第1回日本乳酸菌学会賞を受賞されました。
先生の長年にわたる研究がこのような大変素晴らしい賞の受賞につながりました。また受賞講演では、乳酸菌の新産業創生・研究の実用化としてオーラルピースのご紹介をいただきました。
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~日本乳酸菌学会賞授賞式・受賞者講演 要旨~
「乳酸菌の新産業創成をめざした戦略的研究」
九州大学大学院農学研究院 生命機能科学部門・教授 園元謙二 先生
私の乳酸菌研究は、1993年4月に九州大学農学部の微生物工学研究室(石崎文彬教授)に助教授として転任したことから始まる。
私のそれまでの専門は酵素工学で、主にバイオリアクターの反応素子としての生体触媒の開発とバイオシステムの構築に関する合成・生物化学的研究を行っていた。
酵素、微生物、動植物細胞、オルガネラを生体触媒として扱っていたが、生命体としての発酵微生物を扱い、その利用を工学的に行う“発酵工学研究”がこの転任によって始まったと言える。
しかし、乳酸菌研究は、日本でもすでに乳酸菌学会の前身である“乳酸菌研究集談会”が1990年6月29日に設立され、同時に第1回研究会が開催され活発な研究が行われていた。すなわち、私は本学会の基礎を築き、発展させてきた乳酸菌研究の先達から見れば浅学菲才な“ヒヨっ子”“初心者”である。
当時、多くの先達から非常に親切なご助言などをいただき、乳酸菌研究を始めたことが思い出される。乳酸菌研究集談会のそのような雰囲気は他の学協会では味わえない貴重なものであり、大変感謝している。しかし、同じ土俵では日本だけでなく世界でも研究において到底勝ち目はなかった。
この20年間、常に意識してきたことは、農学(部)の「応用微生物学・発酵」と工学(部)の「発酵工学・培養工学」の違いである。私の履歴がその違いに敏感に反応してきたかもしれない。それらの究極目標は「微生物の応用的研究(たとえば有用物質生産)とその基礎学理の探求」であるが、それらの研究過程における取り組み方が異なる。
僻論かもしれないが、前者は微生物を生命として捉えた生物研究戦略、後者は微生物を触媒として捉えたプロセス研究戦略を展開していく。それら戦略は、段階的研究ステップ(単位操作)である微生物のスクリーニング・育種から培養・発酵法(プロセス)の確立・制御、ダウンストリームまで浸透している。
これらの違いを意識しながら、発酵研究を化学や酵素工学などヘテロな視点で俯瞰できれば、また発酵研究の醍醐味を異分野の研究者と共有できれば、新たな学問分野を創生できると信じ続けてきた。事実、多くの有能な共同研究者に恵まれて今日を迎えることができている。
ここでは、乳酸菌の新産業創成をめざした戦略的研究、(1)効率的な乳酸生産能力、(2)安全安心な抗菌物質である“バクテリオシン”の生産能力、に着目し、スクリーニングからエンジニアリングに関する私の研究履歴を以下の項目について具体的に紹介したい。
(1)環境調和型新産業体系「Lactate Industry」実現のための研究
未利用バイオマスの有効利用;様々な光学活性乳酸生産菌の分離;バイオリファイナリーの問題点の洗い出し;戦略的な新奇乳酸菌のスクリーニング;優れた発酵生産システムの開発;究極の無殺菌開放乳酸発酵
(2)新奇バクテリオシンの発掘、生合成・特性研究、その実用化に関する研究
新奇バクテリオシンを生産する乳酸菌の迅速スクリーニング;特異な構造に基づく生合成と作用機能の解明;バクテリオシンの高度な微生物制御の利用;ランチビオティックの生合成と作用機構の研究;ランチビオティック工学の創成研究
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園元謙二 先生のプロフィール
九州大学大学院農学研究院 生命機能科学部門 教授 日本生物工学会会長、日本乳酸菌学会(元)副会長
1982年京都大学大学院工学研究科修了。同年京都大学工学部助手、1990年九州工業大学助教授、1993年九州大学助教授、2001年教授となり現在に至る。天然ペプチド「バクテリオシン」の研究に関し、過去約15年にわたり従事し。基礎から応用まで幅広い研究を展開し、これまでに多くの業績を収めている。主な研究業績は、新奇バクテリオシンの発掘とその実用化研究、ランチビオティック工学の創成研究である。さらに多くの産官学連携プロジェクトなどを推進し、バクテリオシンの食産業や医療への実用化研究も精力的に行っている。バクテリオシンという新奇生物活性物質のシーズ発掘から有効利用まで踏襲した功績を生物工学分野に収めている。
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